この回のメモ
今回は髙橋が「AIの成果が出ないのは、社員のせいではない」というテーマで、中島聡氏のメルマガ「週刊Life is beautiful」で紹介された2本の記事を出発点に、会社のAI導入を深掘りしました。前回の「個人がAIエージェントに仕事を頼む」という話から一段上がり、会社全体で見たときになぜ成果が出ないのかを扱いました。
1本目の記事からは、仕事が減らない2つの入れ方(汎用アシスタントを全員に配る、AI搭載の専用ソフトを増やす)を紹介。3か月で約4.7億円を使いながら8割が止まったという事例を通じて、AIを入れても人がつなぐ仕事(照合・確認・調整)が残ることが失敗の共通原因だと整理しました。2本目の記事からは「AIが最も効くのはIT企業とは限らない」という逆説を紹介。製造・物流・人材派遣のように利益が薄く調整仕事の多い業種ほど効果が大きく、利益率3%の会社ならコストを約1%減らすだけで利益が3割以上増える計算を、売上100万円のモデルで確認しました。
2本の記事が同じ答えにたどり着いていたのが「配らず、裏側に置く」という入れ方です。社員がAIを使うのではなく、仕事の流れがAIを使う。請求書処理の例では、あいまいな読み取りだけをAIが担当し、決まった処理は普通のプログラムで確実に行い、例外と重要な判断だけを人へ戻します。成果は利用回数ではなく時間・収益・リスクで測ること、まず繰り返す調整業務を一つ選び「知らせるだけ」の仕組みから小さく始めることまで、導入の手順に落とし込みました。
実践編は武嶋さん。チャットとAIエージェントの違いを「記憶が溜まるか、溜まらないか」という切り口で整理しました。チャットは賢い他人で、記憶は思い出せる範囲しかなく、中身が見えず、直せず、持ち出せない。一方エージェントの記憶は自分のパソコンの中のテキストファイル、いわば書類棚で、見られて、直せて、消せて、バックアップも引っ越しもできる。だから使うほど正確に育っていく——コードを書けない非エンジニアの税理士が、4月に使い始めて約3か月で30近いプロジェクト(顧客ごとの定期業務からサーフィンの上達ノートまで)を育てた実体験として語られました。使い分けの目安も明快で、「来月も同じことを聞くか」「毎回前提の説明からやっているか」「成果物が欲しいか」のどれか1つでも当てはまればエージェント、すべて該当しなければチャットで十分、という判定です。
実例も豊富でした。サーフポイントごとの「カルテ」と無料の気象データを突き合わせて3時間ごとに採点する波予測アプリに加えて、税金まわりの定型業務も対話だけで自動化してきた実例が紹介され、コードを書けなくても仕事の道具を自分で作れることを実感させる内容でした。
始め方も3ステップで紹介されました。①デスクトップ版アプリを入れる ②作業フォルダを1つ決める ③「自分の取扱説明書」を対話で作る——「専門用語を使わない」「勝手に実行しない」「分かるまで進めない」といった約束事を最初に書いておくのが、非エンジニアが安心して進めるコツ。まず何でもいいから始めて、慣れたら自分の仕事の「毎回やっている作業」に当てはめる、という段階論は、髙橋パートの「裏方に置く」という話と自然につながる内容でした。
Q&Aでは、データはローカルではなくクラウドで管理する考え方や個人情報のマスキング、モデル(Opus・Sonnet・Haiku)の使い分けまで話題が広がり、当日Claude Codeを初めて触った参加者がInstagramのフォロワー分析アプリをその場で作る一幕も。ジョーさんからはセキュリティ検証の自動化というアイデアも飛び出し、初参加のメンバーも交えて「まず何から触るか」を持ち帰る回になりました。